先ほどはカッとして、すぐにでも目の前の女達を切り捨てたい衝動に駆られた。しかし、彼女達がそうなった理由の一端が自分にもあることに気づき、今度は自分に対して言いようのない怒りが湧いた。
 ジェラールは不用意に魔獣舎に近付づき、ミレイナの好意に甘えてばかりでしっかりと彼女を守る心配りを欠いたのだ。

「今すぐ去れ。今度俺の目の前に現れたら、次はないと思え」

 言葉だけで凍りそうな冷ややかな口調に、これが冗談ではないと悟ったレイラ達は一目散に走り去る。その様子を見送り、ジェラールはため息をつき天を仰ぐ。

(ミレイナ、お前は今、何をしている?)

 心の中の問いかけに、脳裏に住むミレイナが答えることはない。
 見上げた空を覆う分厚い雲からポツリと頬に冷たいものが落ち、それはやがて本降りとなった。