何人かはジェラールも見覚えがある、自分付きの侍女達だ。
 最近呼んでもいないのにティーセットを運んでくるなど行動が目に余る者が増えてきたので、そろそろ人事を刷新しようと思っていたのだが、色々あって後回しになっていた。

「まあ、本当ですわ」

 ほかのメイドがジェラールのほうを見て、眉を寄せる。

 どうやら、自分が下男と間違われているらしいとジェラールはようやく気が付いた。まあ、ケープを目深に被るという特殊な格好からすると、そう勘違いされても不思議ではないのだが。

「そういえば」

 ジェラール付きの侍女、レイラがなにかを思い出したように指を口元に当てた。

「あの身分不相応に陛下に近付いて魔獣係を外された子は、結局メイドを辞めたみたいよ。やっぱり、魔獣係に行政区の侍女役なんて無理だったのね」
「あら、やっぱり。だってあの子、アリスタ国の人間なのでしょう? いい気味」

 そして彼女達は手を当てて、くすくすと笑う。