[ところで聞いてくれよ。ここ最近、ラングール国は嵐の日が多くてさ、渡ってくる途中もずっと大雨でひどい目に遭った。きっと、竜王陛下の気分が沈んでいるせいで起きている異常気象だよ]

 その鳥は、とてもよく喋る鳥だった。ミレイナの話が終わったと認識するやいなや、旅の途中の冒険譚を延々と話し始める。
 ミレイナはその話に耳を傾けながらも、頭の中はほかのことでいっぱいだった。

(ジェラール陛下、どうしたのかしら?)

 婚約をしていないどころか、覇気がないなんて。
 体調でも崩しているのだろうか。あの人は竜王として臣下に弱いところを見せたがらないから、苦しくても我慢していそうな気がする。

(きちんと婚約されるまでは、見届けてから帰るべきだったな……)

 心配で仕方がないけれど、今のミレイナにはどうすることもできない。

 ミレイナはどうかジェラールを始めとするラングール国で知り合った面々が元気でいますようにと、心の中で祈りを捧げた。