トントントンとノックする音が聞こえ、ミレイナはハッとした。

(いけない、ボーッとしちゃった)

 慌てて立ち上がると玄関へと歩み寄る。
 少し隙間を開けて外を覘くと、艶やかな茶色い髪を肩で切りそろえた、可愛らしい女性が立っているのが見えた。
 若葉を思わせる緑色の目が合うと、その女性──ミレイナの一番の親友であるマノンはにこりと笑う。

「こんにちは、ミレイナ!」
「マノン! どうしたの?」
「遊びに来たの。暇だったから」

 マノンは軽い調子でミレイナの家に入ってくる。そして、台所でスープを作っているのを見つけるとそれを覗き込んでお玉でぐるりとかき混ぜた。