ジェラールに帰りたいと告げたあの日、ジェラールはひどくショックを受けたような顔をした。
 それでも、ミレイナの意志を尊重してくれた。

「本当に帰るのか?」

 帰国当日、何回聞かれたかわからない問いを、また聞かれる。
 ミレイナは「はい」と一度だけ頷いた。

 魔獣係の役目を終わり、もうこれ以上ラングール国に留まる必要はない。あの魔獣達が立派に竜人達の従獣として活躍する姿を見届けられなかったのは残念だし、せっかく仲良くなったリンダと別れるのは辛い。

 けれど、ミレイナは元々アリスタ国民なので、ここにいるべきではないのだ。

「私はアリスタ国民です。元いた場所に戻ります」
「……そうか。お前が戻りたいと本気で願うなら、その願いを聞き入れよう」

 ジェラールは片手を伸ばしてミレイナの頬に触れると、その肌をなぞるように指を滑らせる。空色の透き通った瞳でミレイナを真っ直ぐに見つめてきた。

「俺が連れてきてしまったから、送ってやる」