青菜をミレイナの鼻先に押しつけるジェラールはじっとこちらの様子を見守っている。
 どうやら、食べろということらしい。

 お腹は空いている。なにしろ、人参を一切れ先ほどジェラールに食べさせられた以外には、今朝から殆ど何も食べていないのだ。

 ラングール人参をたくさん収穫したからお昼ご飯にどう調理しようかとルンルンだったのに、こんな災難に見舞われたせいで!

 ──けれど、だがしかしだ。

 ミレイナはゴクリと唾を呑んだ。

 食べたい。目の前に突きつけらた青菜のみずみずしさよ。きっとシャキシャキで美味しいこと間違いなし!

(でも、これを食べて太らされた挙げ句、私が食べられちゃうのよね?)

 これぞ究極の選択。
 美味しい青菜を食べて最後に自分が食べられて死ぬか、青菜を諦めて飢え死にするか。
 最終ルートが結局死ぬことに繋がるのが、さすがは悪魔だ。

「食欲がないのか?」