ミレイナはぐちゃぐちゃになった感情を隠し、ジェラールを見上げる。

「私はそろそろアリスタ国に帰国したいと考えております。お金も貯まってきて帰りの移動の足を手配する見込みも立ったので、引き継ぎをするなら今かと思いました」

 その瞬間、ジェラールの顔がこわばる。

「……本気か?」
「本気です。元々、すぐに帰るつもりだったのがだらだらと長居してしまいました。お仕事を与えてくださった陛下には感謝しております」

 ミレイナは感情を押し殺して淡々と答える。

 ──それに、結婚して誰かと幸せそうにしているあなたを見るのは辛いのです。

 決して口にすることはできない思いを、ミレイナは心の中でジェラールに告げる。

「──ラングール国に残る気持ちは?」
「ありません」