(ジェラール陛下がご成婚……)

 ミレイナはトレーを押す手にぎゅっと力を込めた。

 ジェラールが結婚するときはきっと、ラングール国を上げて盛大なお祝いがされるのだろう。
 職場が変わってリンダとも会えないし、魔獣達と触れあうこともできない。
 その上、ジェラールの隣に誰か知らない女性が立ち、二人が愛おしげに見つめ合っている光景を目の当たりにしたら?

 きっと、耐えられないと思った。

(アリスタ国に、帰りたいな)

 ミレイナは顔を俯かせる。
 本当は、ララとして逃げ出したときにアリスタ国に帰るつもりだった。けれど、途中で魔獣に襲われてとんぼ返りして今に至る。
 それでも、魔獣係をしていたときは自分の存在意義が感じられて、楽しかった。リンダという新しい友人に恵まれ、魔獣達によい環境を与えたいと自分なりに頑張って、毎日充実していた。それに、クレッグとの素敵な出会いもあった。

 今の仕事は嫌いではない。
 けれど、以前のようなわくわく感を感じない。