それは、端から見るととても素敵な組み合わせに見えた。
 凜々しい竜王陛下と美しいお姫様。物語で読んだ通りだ。

(あんな人を好きになるなんて、私ってばかだな……)

 大声で叫べば気付いてもらえそうな距離。
 きっと、ジェラールはミレイナが木から下りられないと言えば助けてくれるだろう。

 だけど──。

 煌びやかな世界の中心に立つジェラールが、とても遠い存在なのだと知らしめられた。

 ミレイナは服の上からカメオを握る手の力をそっと緩めると、舞踏会会場から目を逸らした。
 茜色に染まっていた王宮の外壁が徐々に夕闇に沈み込む。もうすぐ夜が来る。