(これは本当に偶然か?)

 ジェラールはまた浮かんできたおかしな想像が頭を離れず、額に手を当てた。
 執務机に置かれたガラスケースの中に、先日ミレイナにもらったナツメヤシの残りが入っているのが目に入る。

 ──陛下はナツメヤシがお好きでしょう?

 そう言って渡されたとき、確かな違和感を覚えた。

(なぜ、これが俺の好物だと知っていたんだ?)

 ナツメヤシが好きだと誰かに打ち明けたことはない。だが、ララの前ではこれをよく食べていた気がする。

 あまりにも重なりすぎた偶然に、ジェラールはひとり深い思考に沈み込んだ。