両手で顔を覆う、セシリアの後頭部を見つめながらミレイナは状況を把握しようと頭に手を当てる。

「えーっと、お嬢様──」
「セシリアよ」
「セシリア様の息子さんが今朝から行方不明で、どうやら魔獣の森に入った形跡がある。だから、探してほしいということですか?」
「そうよ。あなたはフェンリルを連れていたから、探せるでしょう?」

 フェンリルを連れているから探せるという理論には無理がある。
 確かにミレイナとフェンリル達とは時々探し物ごっこをして遊んでいるが、あくまでも遊びの延長であり、前世でいう警察犬のようにきちんと訓練しているわけではない。

 けれど、ミレイナはさめざめと泣くこの女性をなんとなく放っておくことができなかった。

「わかりました」

 ミレイナは頷く。

「探せるかはわかりませんが、努力しましょう。──何か、息子さんの匂いが付いた小物はないですか? 洋服とか、帽子とか……」
「ハンカチでもいいかしら?」
「はい、十分です。少しだけお借りします。あと、息子さんの名前と見た目の特徴を──」
「名前はクレッグよ。今、三歳なの。見た目の特徴は──」

 ミレイナは一通りの話を聞くとセシリアからハンカチを受け取り、すぐに魔獣舎へと戻った。