あの人は、確か陛下の側近の──。

「ラルフ様、どうかされましたか?」

 ミレイナはその集団で、唯一面識のあるラルフに声を掛けた。ラルフはハッとしたようにこちらを振り向き、ミレイナの顔を見て拍子抜けした顔をした。

「ああ、ミレイナか。なんでもない」

 ラルフはミレイナに事情を話す気はないようで、早く戻れと言いたげににこりと微笑む。
 その表情を見てこれは自分の出る幕はなさそうだとミレイナがシュンとして踵を返そうとすると、「待って!」と呼び止められた。
 振り返ると、泣きはらした目の女性がすがるような目でこちらを見つめている。

「ねえ。あなた、さっきフェンリルを連れていたわよね? お願い、うちの子を探して。お兄様がいないから探せないの」
「え?」

 突然のことに、ミレイナは困惑した。