見上げると、先ほどはすやすやと眠っていた魔獣──これは大きな狼の姿をしているからフェンリルだろうか──がミレイナを熱心に舐めていた。そして、ミレイナにクンクンと鼻を寄せてくる。

(わわっ)

 見た目は自分とは比べものにならないほど大きく厳つい魔獣なのに、こうされると犬のように見える。

(か、可愛いかも……)

 ミレイナには、物心ついた頃には不思議な記憶があった。
 今とは全く違う世界の日本という国で、ペットショップの店員として働いていた前世の記憶だ。

 ミレイナが働いていたペットショップは給料は高いとは言えなかったし、生き物を扱っているのでお盆も正月もなく世話は発生した。一般的に言えば働きやすいとは言い難い職場だったかもしれない。

 それでもミレイナはその仕事が大好きだった。
 なぜなら、可愛いもふもふ達を思う存分にもふることができるから!