ミレイナが初めてラングール国に来た頃は朝晩の冷え込みが強かったが、最近はだんだんと温かな陽気に包まれてきている。
 王宮の庭園を覆う芝生は青々とした絨毯の広げ、花壇には美しい花が咲いていた。

「あ、ネモフィラだわ」 

 庭園の外れで動物たちと日なたぼっこをしてすごしていたミレイナは、芝生の中に瑠璃色の小さな花を見つけて表情を綻ばせる。

 ネモフィラはアリスタ国のミレイナの家の近くにも咲いていて、よく見かけた。

(みんな、元気かなぁ……)

 故郷にいる友人達のことが、ふと脳裏に浮かぶ。
 一番最初に浮かんだのは、親友だった女性──マノンのことだ。ミレイナが獣人であることを知る、数少ないひとりだった。

 親は既にいないけれど、仲良くしてくれる友人がいたから寂しくなく過ごしてこれた。
 みんなは今、何をしているだろう。もしかしたら、ミレイナが急にいなくなったので心配して探しているかもしれない。