ミレイナが笑顔を向けても、ジェラールは答えない。けれど、その腕にはラトをしっかりと乗せて撫でていたので、肯定ととっていいだろう。

 ララのことも可愛がっていたし、ジェラールはきっと元々動物が好きな人に違いない。

 しかし、ラングール国はミレイナの知る限り動物や魔獣を愛玩動物として可愛がる習慣はなさそうだ。
 ジェラールはもふもふ好きを周囲に明かすのが恥ずかしい、もしくは竜王としての威厳が傷つくとでも思っていて、ララのことも「太らせて食べる」と言っていたのだと、今となってはなんとなく想像が付く。

「今日は──」

 ラトを抱いて木の実を食べる様子を眺めていたジェラールが、ミレイナのほうを見る。

「随分と遅いのだな」

 この発言は裏を返せば、いつもこの時間にミレイナがいないことを知っているということだ。ミレイナが想像する以上に、ジェラールはここに来ているのかもしれない。

「はい。友人に誘われて、初めて城下の露天市に行って参りました」

 ミレイナは笑顔で頷いた。