「ミレイナ、もう一ヶ月近く魔獣係やってるけど大丈夫? 今まで全員一週間もたなかったんだから、ミレイナが嫌だったらそろそろ言っても許されると思うよ?」
「大丈夫だよ。とても楽しんでるわ」
「本当?」
「本当よ。リンダだって時々手伝ってくれているんだから知っているでしょう?」

 ミレイナが明るく笑い飛ばすと、リンダはホッとしたような表情を浮かべた。

 ミレイナが魔獣係となる原因となったあの日にリンダも居合わせていたので、もしかすると未だに罪悪感のようなものを覚えていたのかもしれない。けれど、事実としてミレイナはとてもこの役目を楽しんでいたので問題はないのだ。

「清掃係のほうはね、最近舞踏会の話題で持ちきり」
「舞踏会があるの?」
「うん。二週間後かな。国内貴族の若いご令嬢は軒並み招待されてているみたい。私はあんまり詳しくないけど」
「ふうん」

 ラングールの王宮では、平民のメイドと同じくらい貴族令嬢のメイドも多い。
 平民のメイドは清掃係や洗濯係、それにミレイナがやっている魔獣係などの汚れ物作業をする場所に配置され、貴族令嬢のメイドは政務エリアでのお茶出しなど侍女のような役割を担当する。