「ねえ、ミレイナ。城下に一緒に遊びに行かない?」

 仕事終わりの夕方、ミレイナが住み込みの部屋に戻ろうと歩いていると背後からリンダに声を掛けられた。

「城下? なにがあるの?」
「月に一回の露天市だよ。すっごいたくさんお店が出るの。大通りが人でごった返す大盛況になるのよ」

 露天市? アリスタ国にいたときも定期的に青空市場が開催されたが、それと似たようなものだろうか。青空市場の日は大通りに即席テントの屋台がたくさん軒を連ね、辺りは大賑わいだったのを覚えている。
 リンダはどんなお店が出ているのか、身振り手振りを交えながら説明してくれた。

「へえ……。行ってみたいな」
「じゃあ、行こうよ。約束ね。明後日は朝から二人で作業して、午後に一緒に行こう」

 リンダはぱっと表情を綻ばせる。そして、ミレイナの顔色を窺うように覗き込んできた。