──なんですと?

 ミレイナは我が耳を疑った。
 人生十八年で、いや、前世の二十五年も含めた四十三年間で最も衝撃的な発言である。 

「なんだ? 震えているな」

 ミレイナを抱き上げているジェラールが訝しげに眉を寄せる。

「チビだから怖がりなんじゃないっすか? それにしても、食うにしてもこんなちっこいと肉が殆どなさそうだなー。うまいんですかね?」

 ラルフがミレイナの耳を掴んで引っ張り上げようとして、ジェラールが慌ててそれを止めた。

「止めろ、これは俺のだぞ」

 いやいやいや。ミレイナはぷるぷると震えながら首を振る。

 一言言わせていただくと、ミレイナは誰のものでもない。
 それに、これで震えるなという方が無理がある。目の前の二人が、自分を太らせて食べようと相談しているのだ。しかも、一方は全部俺が食うから触るなと牽制までしている。

(に、逃げないとっ!)