ジェラールがミレイナを指さすと、ラルフと呼ばれた男はツカツカとこちらに歩み寄り、ジェラールの膝元を覗く。

「ああ、それ。目を覚ましたらなら魔獣の保護獣舎に連れていけばどうですか?」
「これは魔獣ではないだろう? なんだったかな……、そうだ『ウサギ』というらしい」
「たいして変わらないでしょう。こんなものをジェラール陛下の部屋に置いておいてどうするおつもりです? ゴーランと違ってなんの役にも立ちません」

 ラルフと呼ばれた男とジェラールは会話を続ける。
 ミレイナはその男達を見比べながらじっと話に聞き入った。

 ふと、ジェラールの真っ青な瞳と視線が交わる。
 ジェラールはなぜか眉間に深い皺を寄せこちらを見つめていた。

「俺の聞いた話では──」
「陛下の聞いた話では?」

 ラルフが先を促すように問い返す。

「アリスタ国ではこれを食べるらしい。だから、太らせてみようかと」