ミレイナは衝撃を受けた。

 今まで、半獣の姿でドラゴンに話しかけたことがなかったので知らなかった。もしかすると、魔獣は魔獣でも普通の動物の姿に近い他の四匹とドラゴンでは、大きく種別が異なるのかもしれない。

 昨日もこのドラゴンは一言も喋らなかったけれど、それはしらない場所に警戒しているだけだと思っていたのだ。

(どうしよう。言葉が通じないと、困ったことがあっても聞けないわ)

 けれど、ミレイナはすぐにこの弱気な考えを打ち消した。
 そもそも、前世でペットショップで働いていたときだって、犬や猫の言葉がわかったわけではない。それでも、様子を見ながら感情を読み取ってきた。
 今のところ澄ました様子で座っていて食欲もあるのだから、きっと調子はいいはずだ。

 [でも、名前がないと不便ね……]

 ミレイナはそのドラゴンをじっと見つめる。

 [うーん、『ラドン』はどう?]

 ミレイナはおずおずと『ラドン』と呼び掛ける。
 ラドンはミレイナを見返し、「ギャア」と鳴いた。ミレイナはその様子を見て、きっと気に入ってくれたのだと思って相好を崩す。
 そして、今日も頑張ろうと気合いを入れた。