ドラゴンを保護した翌日、ミレイナはまだ明け方の魔獣舎の扉を開けた。シンと静まりかえった空気に、カチャンという金属がぶつかる音が溶ける。

(あの子、少しは元気になったかしら?)

 ミレイナは恐る恐る獣舎の中を覘いた。藁の上で昨日保護したドラゴンは大人しく座っているのが見えた。ミレイナの気配に気が付いたようで、長い首を持ち上げてこちらを見つめている。

 餌入れを覘くと、中に入れていた木の実や葉っぱは全てなくなっていた。食欲はあるようだと、ホッとする。

 [おはよう。調子はどう?]

 ミレイナが笑顔で問いかける。
 ドラゴンは首を傾げて「ギャア」と鳴いた。

(あれ……?)

 ミレイナはもう一度[おはよう]と声をかけた。しかし、返事はやっぱり意味をなさない「ギャア」という音だった。

(もしかして、ドラゴンには言葉が通じないの?)