な、なんなのよ、もう……。



「お前、あんな動画見てるくらいだから耐性あんのかと思ったけど……全然なんだな!」



笑いすぎて出てきたらしい涙を拭きながらそう言う先生。



「だってあれは……!」


「ん? あれは?」


見ようって言い出したのは美波なんです!


って言おうとしたんだけど、なんか親友を売るみたいで罪悪感が勝ってしまった。


でも、他に言い訳もないから……



「……な、なんでもないです……」



結局こうなってしまう訳で。



「なんだよ、言いたい事はちゃんと言えよな? 後で後悔するかもしれないぞ?」



そう言う先生が、余りにも真剣な顔するから……



「先生は、それで何か後悔した事があるんですか?」



思わず、そんな質問をしてしまった。



「……まぁ、色々あるんだよ、大人には」



そう言った先生は、どこか遠くを見るような目をしていて。


大人、という言葉で線を引かれた気がした。


この人は、どんな気持ちでどこを見てるんだろう……。


ふと、そんな事を考えてしまっている自分に気付き、ハッとする。



「携帯ありがとうございました! そろそろ私、行きますね!」



私が慌ててそう言うと、先生は我に返ったようにこちらを向く。



「おう、俺も部活に戻らないと。じゃあな、気をつけて帰れよ!」



一緒に教室を出て、私は先生に会釈をした。


先生は私とは反対方向に歩いていき、途中で思い出したように振り返る。



「あと! セクハラで訴えんじゃねーぞ?」



冗談交じりにそう言う先生に笑って返すと、私は教室に向かって歩き出した。