……えっと。
完全に忘れられてる……?
「携帯を返してもらいに来ました」
ムッとして言うと、先生はケタケタと笑いだした。
「そんなあからさまに嫌な顔すんなって! 冗談だよ。じゃあほら、生徒指導室行くぞ。黒木、試合続行してて」
生徒指導室?
ああそっか、確か生徒指導の先生でもあるんだっけ。
ってまって、これって生徒指導になんの!?
もしそうだったら美波を恨む。
そんなことをぐるぐる考えていると、生徒指導室に着いた。
「ほらよ、もう学校であんなもん見るんじゃねぇぞ」
「……すみませんでした」
「俺に謝られてもな。まぁ次からはしないこと! 今回は特別に生徒指導の対象からは外してやるから」
「ほんとですか!?」
食い気味にそういうと、先生は呆れたように笑った。
「特別だからな、俺が見逃したことになるんだから、誰にも言うなよ?」
「ありがとうございます!」
学校でAV見てましたって自分で言うバカがどこにいんのよ。
……とは思ったけど、とりあえずお礼を言っておいた。
「……で? お前は、黒木が好きなの?」
「はぁ? 何言って……」
驚いて先生を見ると、想像よりも近くに先生の顔があって、言葉が続かなくなる。
「違うの? それとも……あんな動画見るってことは、俺に何か、望んでる?」
「ひゃっ」
突然耳元で囁かれて、変な声が出てしまう。
慌てて口を抑えると、先生はさらに壁際に迫ってきた。
「……春瀬、そんな声も出せるんだ? ……俺がもっと、出させてやろうか?」
先生の雰囲気が、いつもと違う……。
なにこの感覚、変な感じ……。
「……っせ、セクハラです!」
そう言って、精一杯の力で先生を押し返した。
「━━━━プッ……クククク」
笑い声が聞こえ、瞑ってしまっていた目を開けると、そこには腹を抱えて笑う先生の姿。

