美波なら確かに信用できる。


だから、今まで黙ってたのも、別に信用してなかったからじゃない。


ただ、変な誤解を産みそうだったからってだけで……。



『っていうか、やましい関係でもないんだから、そんくらい言ってもいいと思うけど』


「でも、なんて言えば……」


『……じゃあ分かった、スピーカーにして』



私は言われるがままにスピーカーフォンに設定して、テーブルの上にスマホを置く。



『佐伯、聞こえるか? 俺の声分かる?』



スマホから聞こえてきた声に、驚いた顔をする美波。


……まぁ、そういう反応になりますよね。



『おーい? 佐伯、聞こえてる?』



驚いた顔をしたまま固まってしまっていた美波が、ゆっくりとこっちを見た。



「……え? 白石先生……だよね? なんで連絡先持ってんの……?」


『お、聞こえてはいるみたいだな。春瀬、どこまで話してんの?』


「えっと……ひとり暮らしをする事になったっていうところまでは、話しました」



実は、黒木先輩と義理の兄妹になったことは、美波にも先生にも話していない。


でも、先生は担任になったから私が話さなくても知ってるのかな……?



『そこまで話してるんなら、話は早いじゃん。春瀬の隣の部屋にたまたま俺が住んでたってだけだよ』


「……えぇ!? そうだったの!? そんなことある!?」



なぜか美波は興奮気味。



「結那、なんでもっと早く言ってくれなかったの!?」


「いや、なんとなく……言いにくくて」


「なんでよ〜、親友にはなんでも話しなさいっ! ……でも、ひとつ違和感があるんだけど。部屋が隣になっただけで、連絡先まで交換する?」


「ああ、それは……」



なんて説明しようか迷った時、暫く黙っていた先生が話し出した。



『春瀬、お前今日罰として手伝えって言ったのにサボってんだろ。だからさらにその罰として、今日の晩飯は俺のリクエストメニューな』


「えっ……何が食べたいんですか?」


『カレー』


「……カレー? って、カレーライスのことですよね?」


『それしかないだろ。なに、ナンでもあんの?』



何か手の込んだ料理でも言われるのかと構えたので、拍子抜けした。


っていうか、カレーって私にとっては罰にもならないんだけど。



『じゃあ、家帰ったらすぐ俺の部屋な』


「先生の部屋?」


『おう、今日は俺の部屋で作って。そんで一緒に食うぞ』


「はぁ……」


『たっぷり説教してやるから、覚悟しとけよ』



最後にそう言い残して、電話は切れた。


なるほど、ちゃんと説教が待ってるのか。


もしかしてそれが本当の罰……?



「ねぇ……今の、どういうこと?」



その声で初めて、美波が目の前にいた事を思い出した。



「あぁ……あのね、美波」



私は、美波に全て話すことを決意した。