「はぁ……行きたくなさすぎる……」


放課後。


先生に罰として手伝いに来い、と言われた私は今から行かなければならない。


でも、正直めんどくさい。どーせ雑用だろうし。


っていうか、今日は美波とパンケーキ食べに行く約束してたのに!



「パンケーキ食べたかった〜!」



机に突っ伏して喚く私の隣で、美波が溜息をつく。



「結那がぼけーっとしてるからでしょ? いいじゃん、白石先生と2人っきりなんだから」



そう言う美波をギロっと睨む。



「じゃあ、変わってくれる?」


「私は彼氏いるもーん」



美波だって手伝いとか嫌なくせに。



「パンケーキなら明日でもいいじゃん! ほらほら、早く行かないと先生待ってるよ?」



美波に急かされ、渋々立ち上がった所に美妃が話しかけてきた。



「美波たち、パンケーキ食べに行く約束してたの?」


「うん! でも結那は今日いけなくなったし……美妃、私と2人で行かない!?」



おいおい、あんたさっき明日私と行こうって言ってましたよね?


私が雑用させられている間にお主は予定通りパンケーキを食べるのかね。


でも、元々悪いのは私だし、仕方ないよなぁ……と、今度こそ先生の元へ向かおうとした時。



「あ、いや……結那、パンケーキ食べたいんでしょ? 私が代わりに手伝い行こうか?」



美妃がそう言って優しく微笑んでくれた。


……もう、天使の微笑みにしか見えない。


でもでも、流石にダメだ。友達に頼まれ事押し付けて自分は遊びに行くだなんて、そんなことできない。



「美妃ぃ〜、ありがとぉ〜! でも、私が頼まれた仕事だし……流石に悪いよ」


「ううん、私が行きたいだけだから」


「「え!?」」



私と美波の驚いたような声が重なる。


だって、手伝いに行きたいって……それって、まるで……。


私たちの反応を見て、美妃が慌てだした。



「あ、ち、違うよ!? 行きたいっていうのは、ただ積極的に手伝いとかして先生からの評価を上げておくことで、内申点上がらないかなぁ〜なんて思っただけで!」



そう言う美妃の顔は、耳まで真っ赤になっている。


でもそっかぁ……一瞬、先生のこと好きなのかと思っちゃったけど、美妃に限ってそれは無いか。



「えっと、じゃあ……お願いしてもいい?」


「うん、もちろん! 先生には私から上手く言っとくから!」


「ほんとにごめんね! 今度なんか奢る!」


「そんなのいいから」



美妃ってば、どこまで優しいの?


これは蓮が惚れるのにも頷けるわ。


容姿端麗で性格も良いなんて。おまけに成績まで良いし。


結局、私は何度も美妃に謝りながら教室を後にした。