スーパーに入ると、先生がカゴを持ってくれた。
先生と買い物カゴ……やっぱり合わない。
「ほら、なに1人でニヤニヤしてんだ、行くぞ」
「はーい、先生、何か苦手なものとかあります?」
「………いや、特には。」
なんだろう、今の間。
「遠慮しないで言っていいんですよ?」
「何言ってんだ、遠慮なんてしてない。ほんとになんでも食べれるから」
本当かなぁ……?
まぁ、本人が言うんだから気にしないでいいよね!
「あ、先生! 人参が特売ですよ! これはなんとしてでも買わないと」
そう言って次々と人参をカゴに入れていると、先生がカゴから売り場に戻し始めた。
「えっ、ちょっ、何するんですか! こんなに安いのに……あ、もしかして人参嫌いとか?」
そう言うと、先生がピクッとして動きを止めた。
これは……図星か?
なら、さっき言えばよかったのに。
「別に、嫌いじゃない。人参くらい食べれるけど、その……こ、こんなに安いと品質的に心配になるだろ?」
「スーパーでそんな変なもの売りませんって。それに、生産者の名前も表示されてるし」
「それでも、こんなにいらないだろ?」
「いります! 今日の昼食は人参尽くしですよ!」
「はぁ!? そんなの俺食えねぇよ!」
「え? だって嫌いじゃないんですよね?」
「それは……そうだけど……」
やっぱり嫌いなんだ、人参。
なんで言わないんだろう? そんなに意地はらなくても……。
まぁいいや、認めないんなら入れちゃえ!
「おい、マジで人参料理にすんのかよ!?」
「大丈夫ですって、美味しいですよー」
適当にあしらいながら他の食材をカゴに入れていく。