「おい、早く上がれよ。なんで突っ立ってる?」



なんでって……先生が変なこと言うからじゃん。



「……なんでもないです、お邪魔します」


「なに? さっき俺が言ったこと、気にしてんの? 」


「べっ、別に……」


「冗談に決まってんだろ。自分の生徒に手ぇ出すほど飢えてねぇわ」



冗談……いや、分かってたけども。


先生が生徒に言う冗談じゃなくないですか?


半ば呆れながら、キッチンに向かう。



「失礼します……」



そう言って、何を作ろうか考えながら冷蔵庫を開けると……



「……な、何これ」



中身はほぼビールで、食材はほとんど入っていなかった。



「ちょっと! なんですかこの冷蔵庫! なんもないじゃないですか!?」


「だから俺料理できないんだって」


「これじゃあ何も作れませんよ……」



自分の部屋から具材を取ってこようか悩んでいると、先生が車の鍵を取り出した。



「よし、今から買いに行くぞ」


「え、でも誰かに見られたら……」


「近くに小さいスーパーがあるから、そこなら誰も来ないだろ」



先生と2人でお買い物……。


なんか変な感じ。


先生がスーパーにいるところとか、想像つかない。


先生の背中を追いかけながらそんなことを考えていると、いつの間にか駐車場に着いていた。