春休みに入った。


4月から私は、高校2年生。


てことで、例のマンションへの引越しが完了して初めての朝。


今日は、お父さんが用意してくれた品物を持って、お隣さんに挨拶しに行かないと。


どんな人かな。怖い人じゃないといいけど……。


優子さんがプレゼントしてくれた服の中から可愛いと思ったものをいくつか選んで、鏡の前であててみる。


優子さんは、本当に娘ができることが夢だったみたいで、ショッピングに連れて行ってもらった。


その時に服やアクセサリーなんかをたくさん買ってもらったのだ。


申し訳ない気持ちもあぅたけど、私もお母さんという存在がなかったので、とても新鮮だった。


よし、こんな感じでいいかな。


できれば女の人がいいな。


感じの良いおばちゃんとかだったらすごく助かるんだけど。


10時を回ったので、そろそろ行くことにした。


緊張しながら、隣のチャイムを押す。


出るかな。留守だったらどうしよう。



『はい』



インターフォンから男の人の声が流れた。



「隣に引っ越してきました春瀬です。ご挨拶に伺いました」


『暫くお待ちください』



インターフォンが切れる音がして、ほっと一息つく。


男の人か。


怖くはなさそうだけど……少し不安。



━━━━━━ガチャ


ドアが開く音がして、咄嗟に頭を下げる。



「先程申し上げました通り、昨日隣に引っ越してきました春瀬です! よろしくお願いします!」


「なんでそんなに堅いんだよ。てか元気だな、運動部の挨拶じゃねんだから」



頭から降ってきた聞き覚えのある声に、頭を下げた体制のまま固まる。