……図星をつかれてしまった。
私が密かに心配していたこと。
それは、家族水入らずの時間に私がいることで、気を使われてしまうのではないかということ。
お父さんが帰ってくればいいんだけど、仕事で家を空ける時はどうしても4人になってしまう。
「それと……もう1つ理由があって。正直お父さんは、年頃の男と女をひとつ屋根の下で住まわせるのはあまり良くないと思うんだ。それは、結那の父親として心配しているのもあるが、陸くんだって、結那と住んでいることがバレたらやりにくくなるんじゃないか?」
まぁ、確かに。
お父さんが言いたいことは、分かる。
けど……一人暮らしかぁ。
「でも、女の子の一人暮らしは怖くない? 陸が一人暮らしっていう手もあると思うんだけど」
優子さんが心配そうにこちらを見る。
「そこは大丈夫だ。ちゃんとオートロックがついたマンションを用意するから。家賃のことも任せなさい。それに、結那なら自炊もできるしな。あとは結那次第だよ、どうする? もし、みんなと一緒に住みたいと言っても大歓迎だ。お父さんだって、結那と離れて暮らすのは寂しいからな」
お父さん……。
私のこと信頼して、よく考えて出してくれた答えなんだろうな。
確かに、一人暮らしの方が気は楽かもしれない。
それに、進学したらどっちにしろ、一人暮らししないとなんだし。
「分かった。一人暮らし、してみる」
「そうか、分かった。じゃあ早速明日、マンションの手続きに行ってみるよ。住み始めるのは4月からだから、3月末までに準備をしておきなさい」
「結那ちゃん、本当に大丈夫? 私、娘がずっと欲しかったから、一緒に住めるのを楽しみにしてたのよ。だから、いつでも遊びに来てね。第二の結那ちゃん家だと思って!」
優子さんが、優しく笑いかけてくれた。
お母さんって、こんなに温かいんだ。
私のお母さんも、こんな感じだったのかな……。
「春瀬、いつでも来いよ! 先輩とか後輩とかも気にしなくていいから」
黒木先輩も、そう言ってくれた。
……これが、家族か。
私には昔からお父さんしかいなかったから、すごく新鮮だな。
「優子さんも先輩も、ありがとうございます」
笑顔でそう言うと、ホッコリとした雰囲気になった。
次男の海くんは人見知りなのか、あまり喋れなかったけど、最後に「ばいばい」と手を振ると、笑顔で振り返してくれた。
これから、どうなるんだろう。
一人暮らし……うまくやっていけるかな。
不安の方が多いけど、少しだけ楽しみでもある一人暮らし。
そして同時に、10年以上当たり前だったこの生活も、残りわずかになってしまった。
無事に物事が進みますように……。
その夜は、そう願いながら眠りについた。

