「……分かったよ。ほらほら、自己紹介しよ!」



私が空気を変えようと明るく言うと、それまで黙っていた先輩が吹き出した。



「それ、お前が言うのかよ。ほんとおもしろいな、春瀬は」



その屈託のない笑顔に、思わず目を奪われる。


この笑顔にやられる女子は多いんだろうなぁ……。


それに、さっきため息ついてたから心配だったけど、反対とかではないみたいでよかった。



「まず私! 春瀬誠の娘の、春瀬結那です!高校1年生です。これからよろしくお願いします」


「じゃあ俺も名前と学年だけ。黒木優子の息子の、黒木陸です。長男です。結那さんと同じ高校の高校2年生です。お義父さん、よろしくお願いします!」



お義父さん、と呼ばれたことに、たぶん照れてるお父さん。


それから、黒木先輩の弟の海くん、私のお義母さんになる優子さん、そしてお父さんの順番で自己紹介は進んだ。


頼んだメニューもやっと来て、みんなが手をつけ始めた時、お父さんが再び真面目な面持ちで口を開いた。



「ひとつ、提案があるんだ。」



優子さんも何もきいていないらしく、不思議な顔でお父さんを見る。


私もなんだろうと疑問に思いお父さんを見ると、お父さんは改まるように私の方を向いた。



「結那。一人暮らし、してみないか?」


「「「………え!?」」」



黙々と食べる海くんと至って真面目なお父さん以外の3人の声がハモった。



「お父さんも色々考えたんだが……やっぱり、お父さんが仕事でいない間、優子と陸くんと海くんと結那の4人になってしまうだろ? そうなると、肩身の狭い思いをするんじゃないかと思ってな。もちろん、3人は優しくしてくれるだろう。けど、お前の性格上、自分だけが血が繋がってないことを気にして、3人に気を使ってしまうんじゃないかと思ったんだ。」