それからも先輩とお喋りしていると、待ち合わせ場所のファミレスが見えてきた。
「じゃあ、私ここなんで……」
「じゃあ俺、ここだから……」
同時に言って、お互いに「「え?」」と固まる。
「場所まで一緒なんて、すごい偶然ですね……」
「だな……」
口ではそう言ったものの、内心すごく焦っていた。
だっておかしくない!?
ここまで偶然ってある!? ないよね!?
もしかして、だけど。
先輩は、私のお義母さんの連れ子だったりして……。
いやいやいや、待て待て。 早まるな、私。
お父さん、相手に連れ子がいるなんて一言も言ってなかったもんね。
うん、きっと偶然だよ、偶然。
「お、結那! こっちこっち!」
お父さんの声がして振り向くと、お父さんの隣にはお父さんと同じ年齢くらいの女の人と、小学生くらいの男の子が座っていた。
「あら、陸、結那ちゃんと知り合いだったの?」
その女の人の言葉で、私は嫌な予感が的中してしまった事を悟った。
ウソでしょ……。
お父さん、連れ子がいるならちゃんと言ってよ!
「やっぱ……春瀬のお父さん? だよな?」
先輩が、ひきつった笑顔で聞いてくる。
きっと、先輩も同じファミレスに入った時点でなんとなく分かっていたのだろう。
私が気まずい顔で頷くと、先輩は大きくため息をついた。
え、そんなに嫌だった……!?
そりゃあ、私も嬉しくはないけど、ため息つかれるほどそんな!?
ちょっとショックかもしれない。
「ほらほら、陸くんも結那も、そんなところに突っ立ってないで座りなさい」
お父さん、なに呑気に言ってんのよ。
っていうか、空いてる席につくなら私は先輩の隣しかないじゃん。
お父さんとお義母さんが隣に座ってどーすんのよ。
まぁラブラブしたいのは分かるけど、こういう時は普通、私はお父さんの隣じゃないの!?
しかしそんな事も言えないので、仕方なく先輩の隣に座る。
「結那、すまんな。その……優子に連れ子がいる事を黙っていて」
「そうだよ、最初から言ってよ」
私が口を尖らせると、お父さんはしょんぼりした顔になる。
ああもう、そんな顔されたら許しちゃうじゃん!
「言ったら結那は反対すると思って……」
うんまぁ、確かにそうだけど。
でも、私のことを1番に考えてくれるみたいな事言ってなかったっけ?
まぁいいや、お父さんの幸せを邪魔するようなことだけは絶対にしたくないし。