「はぁ……」
1人で歩く帰り道。
いつもと違う方向だから、美波たちとは駅で別れた。
不安の余り思わず漏れたため息は、日が暮れかけた夕焼け空に吸い込まれていく。
「あれ、春瀬?」
突然名前を呼ばれ、驚いて振り向くと、黒木先輩がこっちに向かって歩いてきていた。
「先輩! 家の方向、こっちなんですか?」
肩を並べて歩きながら聞くと、先輩は何故か笑いだした。
「いや、お前いつも電車一緒じゃん、こっち方向だったら電車被らねぇだろ」
あ、それもそうか。
「じゃあなんでここに?」
「ちょっと、待ち合わせしててな」
「もしかして、彼女ですか!?」
私が目を輝かせて聞くと、先輩は困ったような顔をする。
「残念ながら、彼女じゃないよ。てかいないし。……新しい家族と、初めて会うんだ」
新しい家族……私と一緒だ。
「先輩もなんですね」
「え? なに、春瀬もなの?」
「はい。私、父子家庭なんですけど……父が再婚するんです。だから、新しい義母さんと顔合わせの約束で」
「そうなんだ……。実は俺も、母子家庭なんだ。弟もいるんだけど。俺が小学生の頃、離婚して。それから仕事ばっかだった母親が、いきなり再婚するとか切り出してきてさ。で、今日は新しい義父さんと顔合わせ。春瀬んとこと真逆だな」
「ほんと、偶然ですね!」