花鎖に甘咬み



その理屈、ぜんぜん。



「わかんない……」

「まあ、そうだろうな」

「“裏切り者” だから、真弓は追われるの? 〈赤〉のひとたちに?」

「〈赤〉っつうか、主に花織。個人的な恨み買ってんだよ」

「えええ……なんじゃそりゃあ」

「ついでに、〈白〉も〈黒〉も俺のことを追ってくる」

「はあっ!? なんで!? ────むぐっ」




さすがに意味がわからなさすぎて、素っ頓狂な声を上げると真弓は肩をすくめながら、なぜか甘エビのお寿司を私の開いてふさがらない口に押しこんでくる。




「美味いか?」

「おいしい、けど」

「ならいい」




満足気に口角を上げる真弓に、またはぐらかされたのだと知る。

答えの代わりにお寿司なんて、あんまりだ。



何度聞いたって答えてくれる気はないのだと思う。

けれど……。




「じゃあ、真弓の居場所は、どこにあるの?」




真弓が生きる〈薔薇区〉において。

〈赤〉と〈白〉の二大勢力、それから〈黒〉、そのすべてに追われ狙われ襲われるのだとしたら。



真弓が、このひとが、安心して夜を眠れる場所はどこにあるのだろう。


安心して背中を預けられるひとは、どこにいるのだろう。





「そんなもん、最初っから、ただのひとつもねえよ」