花鎖に甘咬み




「じゃあ、じゃあ……えっと、真弓は?」

「ん?」

「真弓は、何者なの? それくらいは、教えてよ」

「俺?」


こくり、頷く。
真弓は「あー……」と少し迷う素振りを見せてから。



「本城真弓。〈赤〉────Kardinal(カーディナル)の元No.2」

「ナンバーツー? ……元?」

「そう、元」



黒いシャツの襟に指をくっとかけて引き下げると、首筋に現れる鮮血のような赤薔薇の紋章。

それこそが、真弓が 〈赤〉 に所属する印……だけど。



「じゃあ、今は?」

「どこにも属してない」

「〈赤〉は、やめたってこと……?」

「そーゆーこと」

「なんで、やめたの?」

「ウザかった。周りに人間がうじゃうじゃいるっつうのが、そもそも無理なんだわ。肌に合わねえ、かゆい」

「えっ、そんな理由で?」

「悪いか」

「ほんとうのほんとうに?」

「……。さあ?」




あ……、また、だ。
また、今、目の前に線を引かれた。



これ以上は踏み込むな、と言外にそう言っている。




────とりあえず。
真弓が元〈赤〉のNo.2だということはわかった。



そういえば、たしか、花織さんもそんなことを言っていたような。




『カーディナルの現No.2、つまり、マユマユ────本城真弓の後釜ってワケ』



つまりは。