花鎖に甘咬み



顔色ひとつ変えずに言っているけれど。



「リスク……!」

「文句あんのか」

「ありまくりだよ! リスク高すぎでしょっ、〈黒〉のひとたちって、ほらあの見るからにヤバそうな……っ」

「リスクは多少は負うもんだろ」

「回転寿司なんかのために?」

「喜んで食ってんじゃん、ちとせ」

「うっ」



そうですけど。

真弓よりも全然食べている気がしなくもないけれど。




「ていうか……〈黒〉のひとたち、拳銃……持ってたよね。あと、花織さんもナイフ振り回してた」

「それがどうかしたか?」

「えっ? どう、って。ふつうに犯罪でしょ……って話だよ。あんなの見つかったら一発で逮捕じゃないの。通報すれば────」

「無駄だ。捕まるワケない」

「へっ? そんなのおかしいよ」

「無法区域だからな。〈薔薇区〉の中で起こったことは、全て不問」

「不問……って」

「誰が傷つこうが、死のうが、どうなろうが。手を差し伸べてくれるような人間は1人もいやしねえってことだよ」



あ……。

そういえば、『文字通りの無法区域』って真弓の口から前にも聞いたような。

その意味がようやくわかった気がするけれど、でもそれって……それが、ほんとうなら。




「狂ってるだろ」

「!」





心を読んだかのように、真弓が口にする。