花鎖に甘咬み



「う……ううん、なんでもない」


なんでもない、って口では言えるのに。
真弓の隣に、誰とも知らない女の子が並ぶところを想像すると、心の奥がチクチクする。

これって────。



「ふうん? ま、いいけど。とりあえずソレに着替えろ」

「え……と、ここで?」

「ココ以外にどこがあんだよ」

「せ、せめて更衣室とか、他の部屋とか……!」



男の人の前で、着替えとか、ムリ……!

父にだって、ほとんど一緒に行動していた柏木にだって、肌をさらすことなんてないのに。



「ったく、ほんと手のかかるお嬢様だな」



呆れて目を細めたかと思えば、真弓はくるりと私に背を向けた。



「えと……」

「これでいいだろ。目ェ、瞑っててやるからその間に着替えろ」

「へ!? やあっ、やだやだ、無理です……!」

「ココ、この部屋とシャワー室しかねーんだよ、諦めろ」



シャワー室は、床が濡れているからだめなんだと。

きっぱり言いきられてしまって、降参。
おとなしく真弓の言うとおりにするしかない。

目を閉じてくれているという真弓を信じて、ぷつ、ぷつ……とひとつずつ胸もとのボタンを外していく。