花鎖に甘咬み




「兎にも角にも、ちとせのその服はココじゃアウト。狙われて、格好の餌食にされて、ジ・エンド、な」

「……っ、わかった、けど……私、見てのとおり、着替えもなにも持ってなくて、一文無しだし」

「あ゛ー、はいはい」

「わっ!」



用意周到。

最初からそのつもりだったのか、流れるような手つきでなにか布のようなものを手渡される。


広げてみると、布……じゃなくて、服だった。

黒いスウェットと、同じく黒のスキニーパンツ。



貸してくれる、ってこと?

でも。



「これ、真弓の?」



それにしてはサイズが小さいような。



「いや。アカリのだな」

「え?」

「この前、アイツ、ここに泊まってったかと思えば、ソレ置いてったんだわ。ったく、誰の縄張りだと思ってんだか」



そうじゃなくて!
私が聞きたいのは────

アカリ、って誰?



「ま、ちょうど良かったか。俺のじゃデカすぎるだろうが、アカリの服ならちとせでも着れんだろ」



アカリ……。
まさか、女の子?


真弓の家に泊まりにくるような仲の────彼女、だったりして。



そうだよね、勝手に真弓のことを恋愛に興味なさそうなひとだと思い込んでいたけれど、彼女のひとりやふたり……いたっておかしくないのかもしれない。


おかしくない、って頭ではそう思うのに。





「ちとせ?」




黙りこむ私に、真弓が不思議そうにしている。