花鎖に甘咬み



「いいから脱げ、んで着替えろ」

「着替え……」



なんだ、そういうこと。

それなら最初から “着替えろ” とわかりやすく言ってくれれば……と納得しかけて、あれ? とふと首をひねる。



「どうして着替えるの? 私べつに、このままでも……汗もそんなにかいてないし」

「そういうことを言ってるんじゃねえ。その格好、目立つだろーが」

「目立つ?」

「自覚ナシかよ」



はて、と首を傾げる。



「〈薔薇区〉の人間じゃねえってひと目見りゃすぐにわかる。ひらひらした白い服────それも、そんな上等な生地。ココの奴等じゃあ、一生お目にかかることもないだろうからな」



そんなに、違う?
思わず、まとうワンピースに視線を落とした。

ふつうの、普段着、なのに。




「花織も言ってたろ。オジョーサマつって」

「あ……」




そう、だった。


『キレーなお顔も、その高そーなお洋服も、裕福やって自分から言ってるようなもんや』




なんでわかるのって、あのとき思ったけれど。
この街────〈薔薇区〉からしてみれば、私は部外者。

私がふつうだと思ってることは、ココのふつうじゃなくて。