花鎖に甘咬み



ともかく。



「は、はやく服着てっ」

「照れてんの?」



〜〜〜っ!!


違うもん、どこ見ていいかわからないだけだもん。

ふるふると首を横にふって、後ずさる、と。




「なにその反応」

「服着るまで近づいてくるの禁止! ヘンタイ!」

「家出だの何だの、もっとダイタンなことしておきながらこのくらいで真っ赤になんのな」

「わ、悪いですか……っ」

「いーや?」




また、あの目。
嗜虐心たっぷりの。

油断すると、頭からがぶりと食べられちゃいそうな。




「教えてやろうか?」

「え……?」

「男のこと、知らねーっつうなら俺が教えてやる」

「待っ、どっ、どうやって?!」

「とりあえず、触ってみるとか」

「なに言って……っ」




真弓がつかつかと歩み寄ってくる。
さっき『服着るまで近づくの禁止』って言ったのに!



あっという間に、目の前に真弓の壁ができる。
艶めかしい肌色、直視するなんて私にはレベルが高すぎる……けれど、目を逸らすことも、なぜかできなかった。



触る……って、真弓の素肌、を……?

ムリムリムリ、そんなはしたないこと、想像だけで頭のなかがバクハツしちゃう。


結局、硬直したままおろおろしていると。




「なにジロジロ見てんだよヘンタイ」

「……! 今のは真弓が悪いのに……!」

「ばーか、わかってるっつーの。さっきちとせに変態呼ばわりされた仕返ししとかなきゃ割に合わねえんだよ」




ぱちん、とおでこを弾かれる。




「っ、イタッ!」

「うそつけ、痛くねーように加減してんだよこっちは」




真弓の指摘どおり痛くないおでこをおさえる私を、からかうように笑って、真弓はいつのまに準備していたのか、黒いシャツを羽織った。


おとなしく最初から着てくれていればよかったものを。

とにかく、これでもう変にドギマギせずにすむ。



「からかって悪かったな」

「え……あ、う……ううん」



びっくりした。

真弓が謝るなんて、珍しい。
悪かった、なんてはじめて聞いたかも。


ていうか、からかわれてたんだ……。

く、悔しい。
真弓の手のひらの上で踊らされている感じが、すごく。




「ちとせの反応が可愛くてつい」

「……え?」

「んー、なんも」






今、真弓がなにか言ったような気がしたんだけど……。

気のせい、かな。