花鎖に甘咬み



そんなものあるわけが────と思ったところで、ふと、思い出す。ええい、これならどうだ、……苦しまぎれでしかないけれど!




「純圭さん、口を開けてくださいっ」

「な……っ」




返事を待たず、つかつかと純圭さんに歩み寄る。純圭さんの眉間にぎゅっと皺が寄って、そういえば、この人、女性が苦手なんだったっけ……なんて思い出しつつ。



ポケットになぜかずっと入れっぱなしだった、ソレを取り出して。

包み紙をぺり、と剥いて、そのまま純圭さんの口の中に突っ込んだ。



「んぐっ」

「……どうですか?」



急に異物を突っ込まれた純圭さんは、怪訝に顔を歪めながらもごもごと咀嚼していたけれど、突然ぱ、と顔色を変える。

顔色が明るく変わったのは、たぶん、気のせいじゃない……と信じたい。



「それ、ベルギーの高級チョコレートなんです。キルシュ入りの、私のお気に入りの。美味しいですよね?」




苦しまぎれだけれど、勝算がないわけじゃない。

だって、たしか純圭さんは、極度の甘党、だったはず。




「入手困難なブランドなんですけど、北川の────私の家と懇意にしてくれていて、定期的に送ってくれるんです。純圭さんにそのチョコレート、おすそわけしてあげても、いいですよ」


「……」

「っ、それが、私の示せる “対価” です!」