花鎖に甘咬み



背後から突然声がして、心臓が止まるかと思った。

とっさに声を上げなかったことを褒めてほしいくらい。

さっきとは違う意味で心拍数が上がる。


「ふはっ、やっぱオジョーサマ、見応えある反応してくれるなあ」



朝に会ったばかりの伊織さんと瓜二つ。
銀髪に、片目が隠れた三白眼。

下まぶたに巣食うクマが特徴的なのは────。



「花織」

「マユマユと直接話すのは久しぶりやな」

「用件は?」



「そんな冷たくせんとってや。マユマユが聞いたこともないけったいな作戦実行するっていうから、そんなことするくらいやったら俺がマユマユの息の根止めたってもよかったんやで? ……ま、そんなつまんないことせんけどな」




はー……と息を吐き出した花織さんは、真弓に向かってなにかを投げた。真弓がそれを器用にキャッチする。




「燈のバイクの鍵や。6番地の裏に停めてある」

「いいのか?」

「足がなかったら困るやろ。そもそも使いどころのないお荷物女を抱えて動くんやから」




ちらりと花織さんが私を見る。

物凄い皮肉だけれど、事実でもあるので反論できない。