× × ×


「真弓っ」

「なんだよ」

「なんだよ、じゃないよ! さっきから何度も聞いてるよね!? ここ、どこなのっ、勝手に入っていいのっ?」



バイクで辿りついたのは、よくわからない場所だった。

扉ともいえないようながたついた板を慣れた様子で動かした真弓は、私を抱えてずんずん中へと進んでいく。



驚くのは、中に入ってからだった。

見た目とはうらはらに、ちゃんと “家” 。



柔らかそうなソファが置かれた居間のような空間、それから部屋がずらっと並んでいる。キッチンもあって、衣類らしき布も無造作に椅子にかけられていて。


真弓の隠れ家より、ずっと生活感がある。

誰かがここで暮らしているのは間違いなさそうだ。




「〈赤〉の倉庫だ」

「えっ。ここ、が……?」



倉庫って言うからには、もっとがらんどうで、殺伐としているのかと思っていたけれど……。

ここは、なんというか、雰囲気がフレンドリーで、シェアハウスに近い。



「ていうか、〈赤〉の倉庫って、真弓、入ってよかったの?」



だって、抜けた……んだよね。
そのあたりのことは、よくわからないけれど。



「よくはない」

「え゛」

「が、燈が使えっつったから大丈夫だろ」



燈さんが……?

さっき出逢ったばかりの童顔の男のひとを思い出す。きょとんとして、しぱしぱ瞬きを繰り返した。



真弓は私を抱えたまま、慣れたように右から2番目の部屋のノブに手をかけて、足で押し開ける。