花鎖に甘咬み




避けきれなかった拳が、顔の真正面に向かってくる。

心臓が嫌に波打った。

でも、一発くらいなら食らっても……と、衝撃を覚悟して、きゅ、と目を瞑る、と。




「え」




あ、あれ……?



来ると思った衝撃が来なくて、慌てて目を開けると、私を狙った拳を真弓がひねり上げたところだった。


う、うそ。


あの位置じゃあ、真弓には見えてなかったはずなのに。

────というか、さっきから。




『背中は預ける』なんて言っていたくせに、私に降りかかる火の粉をすべて、真弓が取り払ってくれているような。


おかげで、本来なら私が受けていたはずの攻撃は、何ひとつ届いていない。

傷はおろか、痛みひとつさえ。




「真弓っ、こっちはいいよ……! 庇ってくれなくても大丈夫だから、真弓は自分のことだけ考えて……っ!」




だいたい、真弓の方が大勢を相手してるのに。

私のことまで気にかけて、なんて、それこそ無茶だよ。




「私、そんなにか弱くないから、守ってもらわなくても自分でなんとかできるから……!」

「わかってる」




とん、と肩同士が触れた。




「そんなことくらい、わかってんだよ、最初から。弱いだなんて思ってねえ、誰に守られなくとも、お前は大概のことならひとりで立ち向かえる。その鋼の意志でな」


「だ、だったら……」

「それとこれとは別だ」