花鎖に甘咬み



「ほんと。とりあえず俺は前から片付ける。その間、背中はお前に預ける」

「えっ」

「大丈夫だ。俺がついてる。ちとせはいつも通り元気に鉄パイプ振り回してればいい」

「っ、鉄パイプ振り回すのははじめてだからね……!? 全然いつも通りじゃないです……!」




ぶんぶん振り回しながら、そう言うと、背後で真弓が「くっ」と笑った。振動が背中越しに伝わってくる。




「その調子だ。俺に噛みつく元気があるなら余裕だろ」




私に声をかけながらも、真弓は着実に人影を崩していく。

ひとり、ふたり、と順番に倒れていくのは、ほんとうは、おそろしい光景のはずなのに、今はそれがどうしようもなく心の支えだった。



私の力で振り回す鉄パイプに、さほど威力も攻撃力もないけれど、ひとまずの防御にはなっているみたい。


襲いかかってくる男たちに無我夢中で抵抗する。




……でも。

次から次へと途切れることなく現れる男たちに、不安がよぎる。




「さすがに、この中を抜けるなんて、無茶じゃ……っ」




ほろり、弱音がこぼれると。
力強い声が、なだめるように。




「心配すんな」

「!」

「あと少しだ。少しの間だけ堪えろ。あとはどうにかなる」

「どうにかって、そんな」

「手は打ってある」




真弓が断言すると、なぜか、すっと心が凪いでいく。

真弓がそう言うのなら、そうなのだろう、って。



「……!」



だけど、身体的に限界が近いのも事実で。

そもそも体育万年オール3の私が使える体力なんて、たかが知れている。それも、私の何倍も強い男のひとたち相手に。