花鎖に甘咬み




「真弓。私のことはいいから……!」



先に逃げてほしい。


どん、と背中を押すと真弓が物凄い形相で振り向いた。

形のいい眉を、思いっきり釣り上げている。




「ハア? お前何言ってんだ」

「だって、真弓ひとりならこんなの、簡単に抜け出せるよね?」

「だからお前のこと、ココに置いていけと? 〈白〉の巣窟のど真ん中に?」

「う、うん」



頷くと、真弓がゴツン、と額をぶつけてきた。



「……っ、つう」



容赦ない頭突きに、おでこがじんじんする。

涙目、恨みがまじく真弓を見上げれば、思っていたより至近距離で目が合った。



「誰がお前のこと置いていくかよ」



はあ、と真弓が息をつく。



「それじゃあ、俺がここに来た意味がねえだろ」

「え……? でも、さっき、別に私のために来たわけじゃないって」

「ああ。別にお前のこと助けようだとかそういう善意じゃねえからな」




どういう、こと?


きょとんとする私に向かって伸びる無数の腕を、真弓が片っ端から叩き落とす。


指先一本でも、私に触れさせない。
そんな覚悟がこもっているみたいだった。




「取り返しに来た、ちとせのこと」

「……!」


「いっときの気まぐれで隣に置いておこうかと思っただけだったのにな。────ちとせがそばにいないと落ち着かない」



真摯にまっすぐ、落ちてきた真弓の言葉に、そんな場合じゃないのに、心臓がとくんと動いた。