花鎖に甘咬み



真弓が不自然に口を閉じる。


私の腕、足、首すじ────あちこちについた痣を見つけて、ぐっと苦しげな顔に変わった。ふー……、と長く深い息をついて、低く怒気をにじませた声で。




「どいつだ」

「……へ?」

「誰にやられた。コレ」




唸るように、言葉を発する真弓。

不機嫌というか、それを通り越して、やっぱりどうみても怒って────……。



どう答えればいいかわからず、ちら、と純圭さんの方に視線を動かすと、真弓は容赦なく純圭さんの横腹を狙って足を蹴り上げる。ヒュッ、と風を切る音がした。


その蹴りを器用にかわした純圭さんは。




「足癖の悪さは健在か」

「……」

「だが、随分丸くなったものだな? 女ひとりのために、単身で乗り込んで来るとは。以前のお前なら考えられない」




真弓が突き出した腕を、純圭さんは片手で受けとめる。

真正面からの拮抗は、じりじりと焼け切るような音が聞こえてきそうなほどで。



「本城、俺の目的はひとつだ。わかってるんだろ? 最強の駒として、お前が〈白〉に欲しい。お前は俺に似ている。他者を踏みつけ、私欲に生きて死ぬ。そういう生き方しかできないはずだ」


「……」

「女にかまけて腐る気か、本城」




純圭さんがそう言った瞬間、真弓の瞳の獰猛さが増した。




「倉科」




真弓が純圭さんの腕を振り払う。

その勢いで純圭さんの体がわずかに均衡を崩した。



少しの隙を見逃さず、真弓が純圭さんの肩に一撃を入れる。生々しい衝撃音、それから、純圭さんが短く「ぐ」と呻いた。




「俺はお前と動く気はさらさらねーよ。前から言ってるだろ、いい加減諦めろ、他の奴をあたれ」



純圭さんが反撃に出る。


目にも止まらない速さで繰り出された攻撃を真弓はさらりとこともなげにかわした。それも、私を背にかばいながら。



「わかるだろ」




真弓が吐き捨てる。




「俺は誰にも共感しない。生を共にもしない。ひとりで生きてひとりで死ぬんだよ。……それが〈猛獣〉の宿命だからな」