花鎖に甘咬み




翡翠の好戦的な瞳がギラリと光る。



青葉さんが慣れた様子で振り回す鉄パイプを、真弓は真っ向から腕で受けとめた。ゴツ、と思わず耳を塞ぎたくなるような鈍い衝撃音が響く。



絶対にノーダメージなわけがない。
痛くないはずがないのに、顔色ひとつ変えず、真弓は腕一本でパイプを押し返した。




「俺にはわかんねえけどな、全く。こんな、どこにでも落ちてそうな普通の女のどこに、〈猛獣〉がわざわざ動く価値があんのか」

「……」

「〈猛獣〉も、女に腑抜けるとは愚かになったなア? ……ま、たしかに、そこらの女よりは根性はありそうだし強かだし? いっときの暇つぶしとしては使える────っ」




がは、と苦しげに吐き出す音。

真弓が青葉さんのみぞおちに肘を突いて、よろめいた隙に、手首をひねる。カラン、と鉄パイプが地面に落ちる音がする。


青葉さんが体をひねって真弓の手から逃れると、真弓は青葉さんに向かって吐き捨てる。




「お前はもう、黙ってろ」

「あ゛?」

「ちとせについて喋るな。心底ウゼエんだよ」




チッ、と舌打ちして、真弓はこちらを振り向いた。

椅子に座らされて、純圭さんに口を塞がれている私を見て、真弓は不機嫌に顔をしかめる。


ずかずかと大股で近づいてきた真弓は、私が座る椅子の背後にまわって、「はー……」と息を深く吐き出した。




「……ちとせ」



耳もとでこそばゆく囁かれる。



「待たせて悪かった。本当に」




ぷつ、と音がして。
手首と足首の締めつけが急にゆるむ。

真弓が拘束を解いてくれたのだと、すぐにわかった。