花鎖に甘咬み




「なに、〈猛獣〉のクセにそんなこと言うんだ? 気持ち悪い……っね!」




物騒な音がいくつも聞こえてくるけれど、肝心の様子はよくわからない。真弓の方へ伸びたミユキさんの手が、掠めることなくすり抜けるのがかろうじて見える。



チッ、とミユキさんの舌打ちが聞こえる。

それでも怯むことなくミユキさんが真正面から向ける拳を、真弓は腕ごと掴んで、もう片方の手でミユキさんの頭を鷲掴む。



そのままぐっと地面に押しこむと、ミユキさんの体は人形のようにあっけなく落ちていく。「うぐ、っ」と低い悲鳴が上がった。




「気持ち悪いのはどっちだっつう話だろ」

「……っ、ぐ」

「どうせ倉科の指示なんだろうがよ。俺に用があるなら俺のところに来い。やり方がクソほど気に入らねーんだわ」




靴のかかとをミユキさんの背中に容赦なく振り落とす。


少し離れたところからでもわかるほど、真弓は殺気立っていて、空気がびりびりする。動かなくなったミユキさんから、興がさめたように視線を外した真弓は、こちらを振り向く。



目が、合った。

瞬間、真弓の瞳孔がわずかに開いたような気がした。




「……ちとせ」




真弓の唇が、私の名前のかたちに動いたように見えて。