花鎖に甘咬み




一際大きな音、反射的に目を瞑る。




「ウワア、さすが〈猛獣〉。派手に登場してくれるね」




ミユキさんの声、発した〈猛獣〉のワードにぴく、と反応する。

〈猛獣〉って、うそ、そんなわけ……。



戸惑いと、それからどうしても湧いてくる期待。


おそるおそる目を開けると、白い壁が崩れ落ちて、穴が開いていた。そこから眩しい白い光が煌々と射し込んでいる。その強い光を背に立つシルエットは。




「おい、テメエら。────ちとせをどこにやった?」




低く唸るような、こんな声、聞いたことない。
ダン、と壁に手をつくと空気がふるえたような気がした。



真弓。

心のなかで、名前を呼ぶ。



真弓、来て……くれたの?




「ちとせ? ああ……あなたの〈女〉のことか。お名前は知らないけど、その子ならすぐそこで────っ、ぐ」



ミユキさんの言葉が途中でとぎれる。

真弓が乱暴に、ミユキさんの顔を掴んだからだ。




「気安く名前を呼ぶな。下衆どもが」

「ハア? ボクらが下衆なら、あんたも同じ下衆でしょ」




掴んだミユキさんを真弓がとん、と押すと、ミユキさんはあっけなく壁に背中をぶつけて、痛みに顔を歪める。一切の乱れもなかったミルクティーの髪が、くしゃりと崩れた。




「ちとせは違えだろうが」

「……は」

「俺らは下衆でも、ちとせは違う。一緒にするな」




怒って、る……?

ここからはうまく顔が見えない。
でも、真弓の声が、いつもと全然違う。