花鎖に甘咬み



「純圭サン用のな。この人、めちゃくちゃ甘党だから。こんな顔してるけど」



だからって砂糖水……?
さては、純圭さんは、クワガタなのか。


なんて、口にはできずに純圭さんをまじまじと見上げる。

私の視線を感じたのか、純圭さんが鬱陶しげに口を開く。



「なんだ」

「……いえ」



冷えきった声が、怖い。
腕がふるりと震える。

さっきのあの感覚を思い出すだけで、ぞっとするくらい怖くなる。


でも。


一瞬本音をこぼしたときの、切ない横顔が頭をよぎる。

じ、と見つめる私に純圭さんは息をついて、また。



「なんだ」

「私、あなたのこと、べつに好きじゃないです。むしろ怖いです」


「……はあ」


「でも、……いつか、あなたも幸せになれるといいなと思って」




純圭さんの氷海の瞳をあたためて溶かしてくれるような人と、いつか出逢えるといい。だって、なんだか、純圭さんってすごく寂しそうだ。



口にしてから、お節介だったかもしれない、と思う。

私、また余計なことを口走って────




「んぐっ」




突如、乱暴に口のなかになにかをねじこまれる。


純圭さんによって喉奥にまで突っ込まれて、えずきかけたソレの正体は棒つきキャンディーだと、口のなかで溶けた甘さで気づいた。